2008年9月30日火曜日

第3回「笑いの女神たち」に触れて

著者:浜美雪
出版社:白夜書房
価格:1890円(税込み)
初版:2008年7月15日
サイズ:ソフトカバー

ありそうでなかった舞台・テレビ界の女性エンターティナー論集。

高田文夫さんベースの専門誌「笑芸人」連載ということも理由にあるのだが、
その人選の守備範囲の広さに「待望の」という帯がふさわしい。
総勢21人のコメディエンヌがスポットライトを浴びている。
目次を開いて2度見したのが、清水ミチコ・樹木希林・原由子・江利チエミ
の4人の名前である。この4人をエンターティナーとして改めた本 は、多分
ないかもしれない。その視点を世間に再提示したこの本の意義は 大きい。
むしろこの4人を認知させるために存在する本と個人的には思って いる。

清水ミチコは、芸人かもしれないが芸能人でも文化人でもない。優れた
ライブパフォーマンスの個人芸でお金のとれるコメディエンヌだろう。
彼女はもっともっと評価されるべきエンターティナーだとずっと思っている。

樹木希林は、女優かもしれないが東京タワーや也哉子の母だけではない。
反骨とくすぐり笑いのテンポを肝にすえたコメディエンヌだろう。
頭ではわかっていたけど、書物に記されたのは嬉しい。

原由子は、サザンオールスターズかもしれないが優しい歌声や優しい顔
つき だけではない。桑田佳祐と揃う、艶とマヌケを歌うコメディエンヌだろう。
エロバカ歌唱多数。持って生まれた脱力芸。男でいえば、ミスターオクレか。

江利チエミは、歌手かもしれないがひばりと並ぶ国民的存在やまちがっても
演歌歌手では絶対ない。ジャズシンガーであり、実写版サザエさんに代表
されるオキャンで町内の人気者のようなコメディエンヌだろう。

4人の中で唯一、この世にはもういない江利チエミである。彼女の情報は
この先 もずっと更新されない。ならば、彼女が一番輝く役柄の記述を誰かに
残してほしいと思っていた。歌はもちろんだが、キャラクターとしての記録。

関係ないが、
向田邦子の自伝ドラマがあったらその役は江利チエミにやってほしい。
生きてたら。