2010年2月27日土曜日

第20回「子ども詩人たち」に触れて

著者:足立巻一
出版社:理論社
価格:1200円
初版:1972年
サイズ:ハードカバー

今回は、僕のことばより作品を紹介するほうが雄弁だろう。
かつて「きりん」という子どもの詩・作文を中心とした雑誌があった
らしい。これから紹介する作品は「きりん」に発表されたものである。
この本はそれらを拾い上げて、エピソードを盛り込んだ大切な1冊。
なかでも美しい強さを印象付けられた詩をいくつか掲載します。

「停電」 堺市出島小学校5年 鞆 房子 (昭和27年)

停電の夜 
あんな ところに 
トタンのあな 
星のようだ


「牛日記」 岸和田市山滝小学校4年 沢 正彦 (昭和30年代)

きのう、そうじをすると、くそばっかしで、すくられませんでしたので、
いたでとりました。あれですくったら、おちるさかい、手ですくってと
りました。くそをつかんだ手をあらうと、たいへんうつくしくなります。
      *               *
牛がびょうきになった。かずまさくんとこの牛より、まだえらいびょう
きになった。ぼくが牛ごやにはいって、牛の足をわらでこすっちゃっ
たら、なみだが心の中でないています。


「かあちゃん」 豊中市 野口明生(4歳)

かあちゃん
かあちゃん女やのに
ぼく男やのに
かあちゃんがぼくをうんだんか
おもしろいな


「おみず」 (3歳4ヶ月)  ※口述

ママ おみずいうたら
どいだけ(どれだけ) ちいさいの
こうしたとき(ストローかんで)
ぺっちゃんこになるの


「目がもっとよく見えたら」 大阪市立盲学校小学部2年 水谷江美子

わたしは、カラーテレビが見たい。
すみ字の本が見たい。
汽車が見たい。京阪電車が見たい。
ちかてつが見たい。電車が見たい。
ポストが見たい。ろうそくが見たい。
阪東くんのかおが見たい。
北岡くんのかおが見たい。
木村さんのかおが見たい。
ねえちゃんのかおが見たい。
みかんが見たい。バナナが見たい。
りんごが見たい。かきが見たい。
カレーが見たい。サラダが見たい。
はがきが見たい。てがみを見たい。
オルガンが見たい。花が見たい。
川が見たい。橋が見たい。
わたしは、土よう日に
しょうわちょうのびょういんへ
いっています。


「星」 岐阜県立盲学校4年 仲井秋夫

星はキラキラ光っているとみんながいう
ぼくは星を知らない
でも、なんだか、
ねこのなき声みたいな気がする