2008年12月26日金曜日

第6回「路地裏の京都」に触れて

著者:甲斐扶佐義
出版社:道出版
価格:2940円
初版:2008年10月15日
サイズ:A4変型判

京都人がいつか見てきた情景をいつも撮ってしまうのが
甲斐扶佐義という人だ。

何冊、形にしてきたのだろう。何度、同じ写真に遭遇しただろう。
しかし、その都度、京都人は反応させられる。
何度見ても、京都人のトラウマにも似た「知ってる」空気が
写りこんでいる。やはり平常心では見ていられない。

モノクロの子どもを見ては あの日の自分を探し、
お年寄りの歩く姿を見ては 祖父・祖母が蘇り、
平日の町内風景を見ては 忘れていた出来事を思い出し、
祭りのにぎわいを見ては ほのかな緊張が再燃する。

そんな写真を撮る甲斐さんは、スケベな人だと思う。
好奇心旺盛で、人間の隙を逃さない。
「隙」は自分にとっては忘れている時間であり、
他人の「隙」は自分の心象風景に刻まれるものである。
人間に向けてシャッターを押す行為は
自分と他人の「隙」を結びつけることなのかもしれない。

京都のデジャヴを甲斐さんは今日も本能と煩悩に
まかせて撮り続けている。