2008年11月4日火曜日

第4回「人生読本 友だち」に触れて

著者:河盛好蔵 ほか
出版社:河出書房新社
価格:680円(税込み)
初版:昭和54年10月15日
サイズ:ソフトカバー

古本市に行くと、いつも探してしまうのがこの「人生読本」シリーズ。

豪華な顔ぶれの執筆陣を迎えて、ワンテーマに沿った文章を編んである。
「ユーモア」「同居術」「ダンディズム」「旅」「仕事」「日記」「マンガ」など
個人的に興味深いテーマの巻などが存在する。(もちろん他にももっとある)
今回紹介させていただくのは、晩夏の古本市で買った「友だち」。

表紙をご覧いただくとわかる執筆陣のほかにも谷川俊太郎、赤塚不二夫、
串田孫一、小川国夫、小林秀雄、宮城まり子、長部日出雄、宇野千代、
三島由紀夫など総勢45名が友だちの紹介、定義、対談、思い出などを
記す。

中でも宇野千代の「親しい仲」の定義が眼にとまる。
彼女は、「親しいということと、なにもかもあけすけに見せるというの
は違う」と説く。親しき仲にも礼儀ありの「礼儀」につっこむ。
ニュアンス変わるといけないので少し引用。

~親しい仲であればあるだけ、あの佳き眺めをむげに見馴らし
  果てんことを惜しむ気持があるべきだと思ふ。その佳きもの
  を惜しむ気持が、ありのままを隠す気持、嘘吐きの頭に神宿る
  結果につながってゐる、それが礼儀だと思ふ。  
          ~中略~
  親友といふものは相手の家の借金の高まで知り、夫婦といふもの
  は妻のほくろの数まで知るのがほんたうだと思ひ込んでゐる意味
  での親しさが、一体、私たちの心にどれだけの深い愛をよび起す
  助けになるだらうか。礼儀とは、さういふ深い愛をもつた嘘吐きの
  気持である。~   原文ママ

要するに、相手の身の上をちっとも知らない「親友」というのもあるはずだ。